第九十話 ◆ 陶工三代の到達点

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前回の煎茶碗を含む五客組。一客一客、絵変わりです。
どれも細かさと画趣の高さでは同等。煎茶碗ワンセットに
どれだけの手間をかけているのでしょうか。

幸いなことに共箱が残っているので、作者がわかります。

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「吉造製」とあり「陶山」という号が印でおされています。
明治初期に金沢で活躍した、
内海吉造(1831~1885 天保二~明治十八年)です。
吉田屋の画工だった、あの鍋屋丈助の孫です。

父は鍋屋吉兵衛といって、民山窯で画工を務めていました。
吉造は吉兵衛から陶画を教わったようですから、
赤絵細描については
民山窯の技術を受け継いでいたと言えるでしょう。
まさに再興九谷の歴史を体現するような家系です。

神業のような赤絵細描の技を持っていた吉造ですが、
現代に残る作品としては、むしろ色絵の方が知られています。
石川県立美術館の所蔵品を検索すると、
彼の作は三点出てきますが、すべて色絵です。

この時代の名工は彼に限らず、
オールマイティに技術を使いこなす人が多いです。
しかもどの作風でもレベルが高い。
いったいどれだけの修業を経ていたのか、想像もつきません。

五客の中からもう一客、アップの画像を出しておきます。
陶工三代で到達した技のすごさです。

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