第十七話 ◆ 吉田屋の角福

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吉田屋の裏銘と言えば「角福」。
確かに、ほとんどの吉田屋製品にはこれがあります。
試しに平成14年の「吉田屋名陶展」
(石川県九谷焼美術館)の図録で数えてみたら、
掲載57点中、少なくとも51点は「角福」でした。
(あとは不可読文字や無銘、あるいは
写真でははっきりしない、など)。

古九谷でも、特に青手では“角福率”は高いように
思えるので、これについては
吉田屋がお手本に忠実だというところでしょうか。
(五彩手の古九谷だと「太明成化年製」や無銘なども多い)。
吉田屋の角福には様々なタイプがありますが、
何種類かは分類が可能です。
画像は、そうした例の一部です。

上段の2つは、初期と思われる製品に付いていた角福。
筆致が弱く、悪筆という感じです。

中段の2つは、割と多くの製品に見かける型で、
福の字の「田」が大きく、筆に勢いがあるのが特色。
中皿や鉢などでよく見る気がします。

下段の2つも特徴的です。
「示す扁」がうねっていたり、
「田」の中が「×」になっていたり、
旁(つくり)の線が上からつながっていたり。
どちらも中~後期と思われる上手の小品の角福です。

角福も、もっと多くの例を真剣に分類・分析すれば、
吉田屋製品の作風の変遷や、描き手の役割分担など、
いろいろなことが見えてくるのかも知れません。