第十六話 ◆ 金魚藻唐草のこと

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見れば、語源は一目瞭然。
金魚鉢の中に生えていそうな、葉が長くつながった水草
思わせることから「金魚藻唐草」。

おそらく吉田屋全作品中、
もっとも多く使われている特有の唐草文様です。
理由は単純に、手早く描けたからでしょう。
古九谷にこんな唐草は見られませんし、
吉田屋以後に引き継がれることもなかったので、
ある意味、一番たやすく吉田屋を見分けるポイントです。

正直、以前はこの金魚藻はあまり好きではありませんでした。
いかにも「手抜きじゃないの?」という印象を受け、
表側の気合いの入り方と比べて、
物足りない気がしていました。
しかし慣れとは怖いもので、次第に吉田屋の味、
と許せるようになってしまいました。

画像では、中皿3点の金魚藻唐草を並べてみました。
この量産向きの唐草にも、
丁寧さに違いがあることがわかります。
たぶん下へ行くほど、時期が後なのではないでしょうか。

どんなに葉の形が崩れても、
空間の埋め方は常にバランスが取れています。
絵のうまい人が、さらさらと描いていると思います。
案外、鍋屋丈助の担当なのか?
などと想像するのも楽しいものです。